組み立て

 このクレーンは、特大車扱いのトレーラーで運搬可能なサイズに分解することができます。下の写真は、クレーンの主要なパーツが野積みされている状態です(スクラップ置き場じゃありません)。手前側には、運搬トレーラーや先導車、ブームサポート用台車なども置かれています。

 

 このクレーンの組み立て手順を説明します。組み立てシーンでは、小さなおじさんたちが仕事をしていますが、実際にはスケールが異なります。実際の人間の大きさは、このおじさんたちの2/3ほどになります。

 

■アクスルの組み立て

 まず、養生した地盤上に、走行トラック組み立て用ジャッキを用意します。アクスル側にジャッキが付いていれば、このような組み立て用ジャッキは不要なのですが、スペースがなく、アクスル側にジャッキを装着できませんでした。
 トレーラーが運んでいるのは、最初に設置するセンターアクスルです。手前に見えているギヤは、旋回体駆動用のものです。

 

 ジャッキ上にセンターアクスルを設置します。この部分は、旋回体とクローラートラックを結合する重要な部分です。内部には旋回体駆動用ギヤボックスが内蔵されています。
 背後のトレーラーは、次に設置するリアアクスルを積んでいます。

 

 次にリアアクスルを設置します。リアアクスルには、左右クローラーを駆動する2台のモーターが装着されています。背後のトレーラーは、次に設置するフロントアクスルを積んでいます。

 

 フロントアクスルを設置します(写真は、180度向きが変わっています)。フロントアクスルには旋回体回転用のモーターが搭載されています。フロントアクスルのギヤは、センターアクスルのギヤに噛み合うようになっています。
 旋回ベアリングは、左右(写真では手前と奥の方向)にあるピニオンギヤで駆動されます。この2つのピニオンギヤは、センターアクスル後ろ側にあるチェーンで連動しています。

 

■クローラートラック組み立て

 クローラートラックは、運搬サイズの都合により、前後に分割されています。 ダブルクローラーなので、スプロケットやアイドラーなどはダブルになっています。スプロケットを駆動するための最終減速はチェーンで行われます。

 

 前後に分割されたクローラートラックを結合します。クローラートラックはペグでつながれた後、補強用の部品(手前の黒い板)でさらに強固に結合されます。このクローラートラックは、前後のスプロケットを両方駆動します。手前にあるのは、前後の小スプロケットを駆動するためのギヤボックスです。
 奥側のクローラートラックはすでに完成しています。クローラートラックをアクスルに装着する前に、トラックの下になる位置にクローラーを用意しておきます。

 

■クローラートラック組み付け

 ギヤボックスを取付けた後、クレーンで吊上げ、アクスルに装着します。アクスル側の細い部分をクローラートラック側の穴に差し込み、ペグで固定します。クローラートラックをアクスルに装着することで、走行用モーターで駆動されるギヤが、クローラートラック側のギヤと噛み合うようになります。
 奥側のクローラートラックはすでに組み付けられています。

 

 アクスルを支えていたジャッキを下げ、クローラートラックをクローラーの上に降ろします。その後、クローラーを結合します。

 

■走行トラックの仕上げ

 電源配線を行い、プラットフォーム、階段を装着すれば、走行トラックは完成です。自走してジャッキの上から移動します。また、上部構造体を装着するために、船体体ベースを90度回転し、標準位置にします。
 後ろにあるのは次に装着するブームベースです。

 

■旋回体組み立て

 走行トラックの旋回体ベースにブームベースを載せます。トレーラーに載っているのはウインチユニットです。

 

■ウインチユニット装着

 ブームベースにウインチユニットを仮組み付けます。地面に置かれた青い部品は、固定ビームです。

 

 固定部品を使って、旋回体ベース、ブームベース、ウインチユニットを固定します。

 

 カウンターウェイトベース、操縦席、キャットウォーク等を取付けます。走行トラックから旋回体キャットウォークに上がるための階段が操縦席の下にあります。キャットウォークから操縦席に行くには、さらに梯子を登る必要があります。

 

■カウンターウェイトワゴン組み立て

 カウンターウェイトワゴンというのは、大荷重吊上げの際に、クレーンの旋回体のカウンターだけでは不足する際に使用する補助ウェイトです。補助とはいっても、旋回中心より距離が離れていること、旋回体側より大重量にできることから、実質的には主カウンターウェイトとなります。カウンターウェイトワゴンには、クレーンの旋回、移動に際して移動できるように車輪が付いています。
 カウンターウェイトワゴンにエアーコンプレッサー、車輪、ジャッキ等を装着します。写真ではすでにバルブ、エアーコンプレッサーがフレームに装着されています。後ろに見えるのは、カウンターウェイトを載せるための床板です。

 

 車輪を取付け、ジャッキアップした状態です。2組の車輪は、左右のモーターで個別に旋回できます。バルブは2組あり、1つはカウンターウェイトワゴンのジャッキアップシリンダー用、もう1つはマスト用シリンダーのものです。

 

 2組のビームを使って、カウンターウェイトワゴンを旋回体のカウンターウェイトベースにに結合します。ビームには、カウンターウェイトワゴンの台車角度の制御用のコンピュータも装着します。

 

 床板を取り付け、さらに2本のビームを使って固定します。これはカウンターウェイトワゴンが傾斜するのを防ぐための部材です。このビームの上に、エアーコンプレッサー用バッテリーボックスを装着します。
 無負荷時は、ウインチユニット、旋回体側カウンターウェイトの重量もカウンターウェイトワゴンが支えることになります。

 

 ここまで組み立てた状態を横から見てみましょう。カウンターウェイトワゴンが旋回中心からかなり離れていることがわかります。

 

 前から見たところです。ブームベースの上側にはマスト、デリックが装着され、下側にはブームが装着されます。かなり大柄な旋回体ですが、ブームやデリックの荷重のほとんどはこのブームベース部分で受けることになります。
 走行トラック前部と運転席の下に、乗降用の階段が用意されているのがわかります。

■マストとデリックを装着

 マストは、基本的にはメインブームを起伏させるための中間ブームですが、デリックを装着する場合は、デリック先端に旋回体カウンターウェイトの荷重をかけるための部材として働きます。
 まず、マストをブームベースに装着し、次にマストを支えるサポートシリンダーを組み付けます。マストを支えているのは片押し型のシリンダーです。これはマストを持ち上げるだけで、下げる働きはありません。下げるのは4番ウインチで行います。

レゴ的解説: ここで使っているシリンダーは、古いほうのニューマチックで、正圧と負圧で制御するものです。このシリーズには、現行のシリンダーよりストロークの長いものがありました。ここで使っているのはそのロングタイプです。マスト起伏の用途には、押す力だけが必要だったので、これで問題ありません。
 マストを装着したら、マストと4番ウインチの間にワイヤーを通します。本当は、人力で引っ張れるものではありません。細い誘導ワイヤーを最初に通して、ウインチで引っ張るというのが正しいやり方です。
 4番ウインチはタンデムになっていて、1軸に2個のドラムが付いています。従って、マストは2系統のワイヤーによって制御されることになります。

 

 マストのワイヤーを張り終えた状態です。後部にあるエアータンクは、マスト起伏シリンダー用のアキュムレーター(蓄圧器)として使っています。

 

 デリックを組み立てます。まず、中間ブーム(32ポッチ長)を台車の上に置き、それにデリックボトムを取付けます。よく見ると上下が逆ですが、デリックはクレーン前方から取付けた後、後方に倒す形になるので、このように逆さに組み立てる必要があります。
 手前のトレーラーには、次に組み付けるデリックトップが詰まれています。

 

 デリックに限らず、ブーム類はペグで仮固定した後、側面から固定ビームを組み付けて固定します。下の写真では、ボトム側(右側)は完全に組み付けられています。その状態のデリックにデリックトップを組み付けています。
 デリックトップには、ブーム起伏用ブロック(滑車)と航空衝突防止灯が付いていますが、デリックが裏返しに置かれているので、これらはすべて下側にきています。

 

 デリックに誘導用滑車を組み付け、ブームベースに取付けます。この滑車は、主巻、補巻ウインチからのワイヤーをブームの付け根の部分に導くためのものです。
 デリックはマストと同軸に取付けられます。クレーンで吊上げ、慎重に結合します。

 

 結合後の状態です。

 

 デリック先端をクレーンで吊上げながら、デリック先端とマストを結合するガイを装着します。これにより、デリックをマストで起こすことができるようになります。
 デリック先端の上部にたたまれているダークグレーのビームは、デリックとカウンターウェイトワゴンを結合するためのガイ(支持索)です。

 

 ここまでできた状態を真横から撮影したものです。これだけでもちょっとしたクレーンよりかなり大型です。手前にある先導用ライトバンと比べると大きさがわかります。

 

 デリックとマストはガイで結ばれ、マストは多重に掛けられたワイヤーで4番ウインチにつながっていることがわかります。

 

 ブームを取付けるために、デリックを引き起こします。あまり引き起こし過ぎると、デリックが後ろに倒れてしまうので注意しましょう。ぱっと見るとこれでクレーンになるようですが、まだまだです。これからブームを取り付けなければなりません。

 

■ブーム組み立てと装着

 ブームを組み立てます。組み立て手順はデリックのと同じですが、使用形態に応じて、中間ブームの数を変える必要があります。ジブを付ける場合はジブ装着用のブームトップを使用し、使わない場合はフック吊用のトップを使用することになります。
 ここではジブ装着用のトップを使います。手前左側がジブ装着用トップ、手前右側はブームベースです。

 

 ジブ装着用トップを取付けたところです。

 

 ブーム先端近くに、主巻、補巻、ジブ起伏用のワイヤーのための誘導滑車を取付けます。その後、ブーム起伏ガイを装着します。

 

 ブームボトムです。ここにも誘導用の滑車があります。

 

 ブームボトムには補助ウインチ(0番ウインチ)を装着できます。ジブ仕様で主巻と補巻の両方を使う場合、旋回体ウインチだけでは足りないので、この補助ウインチが必要になります。この構成で使う場合、補助ウインチはジブ起伏に割り当てます。
 補助ウインチはブーム横にあるモーターで駆動されます。ウインチドラムはブームの下にあり、上部のローラーを介してワイヤーが送り出されます。

 

 組み上がったブームです。このブームは、中間ブームを4セット使い、全長は約130cmです。

 

 ブームを旋回体に装着します。

 

 ブーム起伏ガイのブロックに3番ウインチのワイヤーを通します。

 

 この状態の全景です。デリックとブームが接続されたので、デリックを後ろに倒すことが
できるようになります。

 

 ブーム起伏ワイヤーを伸ばしながら、マスト起伏ワイヤーを引き込みます。これによりデリックが後方に倒れていき、デリック先端から伸びるガイをカウンターウェイトワゴンに接続することができます。

 

■カウンターウェイトの装着

 旋回体側カウンターウェイトを装着し、ウインチモーターからの配線を接続します。カウンターウェイトとして、電池ボックスを片側に3個、両方で6個使います。この構成ではウインチは5個ですが、吊荷の姿勢調整用などの小型ウインチのために、6個目の電池ボックスを使うことができます。

 

 カウンターウェイトワゴンにもウェイトを積み込みます。こちらは、350mlのドリンク缶を最大6本積載します。旋回体側ウェイト、カウンターウェイトワゴンの総重量は約4kgになります。
 レゴを買い込み過ぎてお小遣いが足りなくなったので、ビールではなく発泡酒を積んでいます。

 

 ここまでくれば、ブームを試験的に起こすことができます。

 

■ジブ装着

 ジブを組み立てます。作業手順はデリックやブームと同じです。 ジブ先端には、フックを吊るためのトップを装着します。このトップは主フックと補フックを吊ることができます。また、避雷針と航空衝突防止灯が備えられています。デリックトップとジブトップの航空衝突防止灯は、RCX制御で点滅可能です。
 写真を取りながら気付いたのですが、風向風速計を作るのを忘れていました。

 

 組み上がったジブです。このジブは中間ブームを2セット使用しています。

 

 ジブをブームに取付けます。トレーラーに詰まれているのは、次に装着するジブ起伏用のポストです。

 

 ポストを取付けています。中間に付いているのは、主巻き、補巻ワイヤーの誘導用の滑車です。
 トレーラーに積まれているのは、ジブ側のガイです。

 

 ジブ側、ブーム側のガイを装着した後、ポストの間に0番(補助)ウインチからのワイヤーを通します。このワイヤーの伸縮により、ジブ角度を変えることができます。

 

 この状態の全景です。ジブ先端からカウンターウェイトワゴン末尾までで、約300cmになります。

 

■フック取付け

 1番ウインチ(補巻)、2番ウインチ(主巻)からのワイヤーを伸ばして、フックを取付けます。今回はワイヤー6本掛けの中重量フックと2本掛けの軽量フックを使用しています。

 

■起伏

 起伏テストを行います。3番ウインチを巻き上げると、ブームがだんだん起きてきます。

 

 ジブ用のガイが張ってきたら、0番ウインチからワイヤーを伸ばし、ジブ角度を大きくします。これにより、ジブ先端が地面に接触したままになるので、ブーム引き起こしが楽になります。

 

 ある程度まで起きたら、ジブ先端を地上から持ち上げます。

 

 かなり引き起こしまた。この状態で、ジブトップは約150cmの高さになっています(雑多なものを隠すための背景布の高さを越えてしまいました)。ガイの長さ調整により、最大220cm程度の揚程が得られます。
 さて、いよいよこれでお仕事です。このクレーンはおおよそ1/50スケールで作っているので、実物でいえば120mクラスになります。

 

戻る