ダイナミックバランス入門

Jerry Holway著 (C) 2003

翻訳っぽいことをしたのは: takobeya.com


オリジナル: http://jerryholway.com/docs/dynamicPrimer.pdf

翻訳についての注:
 これは上記文書を勝手に翻訳したものです。
 逐語訳という訳ではありません。
 図版は当方で起こしなおしました。
 オリジナルに含まれる写真は使っていません。
 翻訳の質は悪いです。間違いもいっぱいあると思います。
 オリジナル文書の目次は、うまく本文に合わない部分もあるので、こちらで付けなおしています。

 さまざまな意味で「回転」を表す用語が使われていますが、ここでは以下のように訳しています。
・rotate、spin
 カメラを支えるポストを回転軸とする動作です。カメラから見ると、パン動作になります。これは、「旋回」あるいは「スピン」と訳しています。
・pivot
 ジンバルを支点とする前後(チルト)、左右方向の動作です。これはたんに「回転」や「傾き」と訳しています。



目次

■概要

■定義

■なぜダイナミックバランスが重要なのか?

■ダイナミックバランスの基礎

■物理学と数学

 単純な4つの質量
 単純な2つの質量、同一平面上
 単純な2つの質量、非同一平面上
 3つの質量
 5つの質量
 現実上の制限

■なぜ数学が重要なのか?

■各種のSteadicamで、単純な経験則でダイナミックバランスを取る方法

■非数学的な概念モデル

 スレッドを長くしたり短くしたりする場合はどうするか?

 アクセサリを追加した場合はどうするか?

■ダイナミックバランスプログラムの利用

■ダイナミックバランスを維持する上で、やってはいけないこと

■スタティックテストはダイナミックバランスのために行うのか?

■上部の調整

■モニタのチルト

■結び

■いくつかの補足

■楽しいこと


■概要

 1988年の初め、Garrett Brownは、「The Steadicam Letter」の1988年夏号にSteadicamの挙動を表す実際の数学についての記事を書くために、Arnold DiGuilioを尋ねました。
 過去15年間、Garrettと私は何百人ものオペレータにダイナミックバランスについて教えてきました。そして私たちは実践的な方法と解説について、徹底的に改善してきました。
 Arnoldの数学は完全で正確でした。しかしArnoldの簡潔なすばらしい説明は、数学に興味のない多くの人たちの頭を混乱させました。
 多くのオペレータはこの記事を見たことがなく、そして現在、ダイナミックバランスについて、曖昧だったり誤った情報がまだ多くはびこっています。
 そこで、Steadicamコミュニティのすべての人に、ダイナミックバランスについての完全な理解を提供してもいい頃だと考えました。これには基本的な物理学と数学の完全な改定も含まれています。
 ダイナミックバランスとは何なのか? どうすればスレッドのダイナミックバランスが取れるのか? ダイナミックバランスはどれだけ重要なのか? スタティックとダイナミックの両面について、Steadicamの挙動を説明する実際の物理学と数学はどのようなものなのか?
 この文書はこれらの疑問に対して、十分かつ完全な形で答えることを目指しています。
 まず、共通の認識を確実なものとするために、いくつかの定義が必要です。次にダイナミックバランスの物理学と数学を多少詳しく解説します。
 最後の節では、Steadicamで良好なダイナミックバランスを取るための誰でもできる簡単な方法を説明します。そしてダイナミックバランスの非数学的な概念モデルを解説します。
 数学の部分はたしかに苦労が多いですが、この問題を完全に理解することで、「Steadicamの芸術」を真剣に実践しているすべての人に大きなメリットがあると信じています。

■定義

 ジンバルがセントラルポストのどこにあるかに関わらず、Steadicamを支えた状態で、セントラルポストが垂直であれば、スタティックバランスが取れている状態です。

例外:
 スレッドが上下方向で完全にバランスしていれば、垂直に限らず、任意の角度で支えることができます。

 Steadicamがダイナミックな釣り合い(Dynamic equilibrium)が取れている状態なら、セントラルポストを中心に回転させた時に、その軸で安定したパン動作をします。
 Steadicamのダイナミックバランスが取れている状態とは、ダイナミックな釣り合い状態であり、そしてスタティックバランスも取れているということです。ダイナミックバランスを取るためには、両方の条件を満たさなければなりません。
 ダイナミックバランスは、力を加えた時にSteadicamがすばやくパンするかゆっくりパンするかを示すものではありません。これは慣性(訳注:慣性モーメント)という別の、しかし関連する重要な要素です。
 Steadicamは、スタティックバランスは取れている、つまり支えた時に完全に垂直になるが、ダイナミックな釣り合いが取れておらず、結果としてダイナミックバランスも取れていないという状態になりがちです。
 この状態では、パンした時に、リグはとても奇妙な挙動を示します。1988年以前、Steadicamはこのようにバランス調整されて(そして設計されて!)いることが多かったのため、Steadicamは素早く旋回するものではないとさえ考えられていたのです。現在、オペレーターは日常的に毎分100回転から150回転という速度で素早くパンします。そしてこの種の仕事では、ダイナミックバランスはとても重要になります。

 ちょっとした注:
 Steadicamを、ダイナミックな釣り合いが取れていて、スタティックバランスが取れていない状態にすることもできます。これは地球上で実現することもできますが、実際にこの状態を活用できるのは、Steadicamの重さがなくなる宇宙空間だけでしょう。

■なぜダイナミックバランスが重要なのか?

 オペレータは、正確なフレームを撮影できるようになりたいものです。適切にバランス調整されたSteadicamは、撮影操作の精度を高めます。
 Steadicamのダイナミックバランスが取れていない場合、オペレータは、パンを行う際に常にSteadicamの水平調整を続けなければなりません。このような調整は操作の精度を低下させ、撮影の品質や情感に影響しかねません。Steadicamのダイナミックバランスの狂いが大きいほど、修正のための調整も大きくなります。
 ダイナミックバランスが取れているSteadicamは、単独で完璧にパンし、オペレータによる継続的な調整は不要です。その結果、パンとフレーミングの精度が向上します。
 言い換えると、ダイナミックバランスのとれたSteadicamは、高性能なベアリングと注意深く組み立てられたジンバルを100パーセント活用できるということです。

■ダイナミックバランスの基礎

 スレッド上のそれぞれのコンポーネントには質量(あるいは重量)があり、ほかのすべてのコンポーネントに対して相対的な位置にあります。主要な、そしてもっとも質量のあるコンポーネントはバッテリ、モニタ、カメラです。
 ほかのコンポーネントとしては、電子回路部、接続ボックス、Steadicamの構造要素、そして小型VTR、フォーカス追従制御の受信器、ビデオ送信器などの各種アクセサリがあります。
 それぞれのコンポーネントは、スタティックバランスとダイナミックな釣り合いの両方に影響します。
 またこれらのコンポーネントは、慣性の度合い、あるいはSteadicamの「フィーリング」にも影響します。
 これらの影響は数学的に表現することができ、そしてダイナミックバランスの記述と調整に数式を使うことができます。
 また数学の理解に基づいた経験則により、数式を解くことなく、リグのセットアップとダイナミックバランスのテストができます。
 Steadicamのモデルごとに、主要なコンポーネントの位置決めについて、オペレータはいくつかの、あるいは多くの選択をすることになります。
 オペレータはまず撮影のために、利用可能な最善の構成で主要コンポーネントを位置決めします。そしてオペレータは、スレッドのスタティックとダイナミックの両方についてバランス調整を行います。
 しかしそこに進む前に、まずスタティックバランスとダイナミックな釣り合いに影響する力について見てみましょう。
 まず、Steadicamではない、2つの物体について議論を始めましょう。このアプローチにより、スタティック/ダイナミックバランスの概念が理解しやすくなります。
 その後、単純な3つの質量を持つSteadicamについて調べ、そしてその質量を利用してダイナミックバランスを取ってみます。

■物理学と数学

 単純な4つの質量

 以下の図1abcは、ジンバルで吊られた軸の末端にある共通平面上に置かれた4つの重りを持つ物体を表しています。これらの重量は「同一平面上」にあります。

 図1 4つの重りを持つ物体


 重量 W1 = W3 かつ W2 = W4 で、軸から重りまでの距離(半径)が同じ場合、これは垂直にぶら下がり、ダイナミックバランスが取れています。論理的に聞こえますが、なぜでしょう?

 単純な2つの質量、同一平面上

 さらに単純化し、軸に吊られた2つの質量を持つ物体を考えてみます。この軸は上部が自由に旋回(rotate)/回転(pivot)します。図2aは基本的に、カメラが無く、ジンバルで吊られたModelI Steadicamを表しています。

翻訳メモ:
 旋回(rotate、spin)は軸と重なる回転軸(パン動作)の回転動作、回転はジンバルを中心とするそれ以外の回転軸による軸の回転動作としています。

 図2a 2つの質量を持つ物体


 下向きの矢印は物体に働く重力を表しています。物体が旋回していない場合、以下の条件を満たせば、物体を吊るした時に完全に垂直になります。

  (1) W1R1 = W2R2

 これがスタティックバランスの基本となる式です。

注意:
 ここでは式を追いやすくするために、数式にカッコ付の青の番号を振っています。赤の数式はもっとも重要なものです。

注意:
 重力は旋回(spin)している物体にも継続的に影響を与えます。

 物体を旋回させると、2番めの力が生まれます。この力は遠心力です。図2bを見てください。

 図2b 遠心力


 遠心力 F の式は次のようになります。

  (2) F = MRΩ2

 ここで M は物体の質量、R は物体の重心から旋回軸までの距離、Ω は角速度です。角速度の一般的な単位は rpm です。
 遠心力 F1 と F2 は、矢印の方向に物体を引っ張ります。
 ここで理解しておくべき非常に重要な点は、遠心力は、物体を旋回させないということです。遠心力は旋回によって生み出され、そしてこの力は旋回速度の2乗に比例して強くなります。
 物体のスタティックバランスが取れていて(つまり W1R1 = W2R2)、軸に働く2つの遠心力の運動が等しければ、ダイナミックバランスが取れていることになります。

  (3) F1L1 = F2L2

 この等式は、F1 = F2 ではありません。遠心力がどれだけ軸を傾けるかは、軸にこの力がかかる位置が回転中心(あるいはリアクションポイント(支点))からどれだけ離れているかによります。
 なぜリアクションポイントまでの距離(図2bの L1 と L2 )が重要であるかを示す実際的な方法を紹介します。
 Steadicamのスタティックバランスを取ります。そしてジンバルのベアリングのすぐ下を指で突きます。これはリアクションポイントに近く、この力はリグにわずかな影響しか与えません。
 そして同じ力で、リグのジンバルから離れた場所を突いてみます。影響は大です!
 これはてこであり、そして式の中で F と L を掛ける理由です。
 物体に作用するこれらの力について、適当な取り決めが必要でしょう。
 図2cのように、物体が「持ち上がる」ように傾く場合、この力を「ポジティブ」と呼びます。

 図2c ポジティブな力


 図2dのように、物体が「下がる」ように傾く場合、この力を「ネガティブ」と呼びます。

 図2d ネガティブな力


注意:
 これらの図の「側面図」を実際に見続けるためには、私たちは旋回する物体のまわりをぐるぐると回らなければなりません。

 「ポジティブ」であるすべての力と「ネガティブ」であるすべての力が等しい場合、物体は旋回しても傾きません。つまりダイナミックな釣り合いが取れているということです。

  (4a) F2L2 + W1R1 = F1L1 + W2R2

 上の式について、F を MRΩ2 で置き換えます。

  (4b) (M2R2Ω2)L2 + W1R1 = (M1R1Ω2)L1 + W2R2

 質量と重量は対応するので、質量を重量に置き換え、以下の式が得られます。

  (4c) (W2R2Ω2)L2 + W1R1 = (W1R1Ω2)L1 + W2R2

 式4cはダイナミックな釣り合いの基本式なので、後で何度も参照します。
 先に進む前に、図2eを見てください。

 図2e


 リアクションポイントを動かし、2つの重りの水平面に下げています。
 これで L = 0 になり、したがってたとえ遠心力が等しくなくても、Steadicamは遠心力によって傾きません。
 数学的には、L1 と L2 が0の場合、式(4c)は以下のようになります。

  (4d) (W2R2Ω2)0 + W1R1 = (W1R1Ω2)0 + W2R2

 つまり次のようになります。

  (4e) W1R1 = W2R2

 図2eでは F は同じ水平面にあります。物体は、スタティックな力 W1R1 と W2R2 が等しくない場合にのみ傾きます。

 単純な2つの質量、非同一平面上

 ここでまた別の2つの質量を持つ物体について考えてみます。ただし今回は、質量は同一平面上にありません。図3aは基本的にカメラを装着しておらず、モニタを上に上げたModel III Steadicamを表しています。
 話を面白くするために、今回は2つの半径も変えています。

 図3a 同一平面上にない2つの質量を持つ物体


 この物体が静止している場合、スタティックな力が等しければ、垂直を維持します。
 これは以前の式です。

  (1) W1R1 = W2R2

 W2 がどれだけ W1 の上になろうが、スタティックバランスは変化しないことに注意してください。スタティックバランスについての式には「L」はありません。
 図3bはこの物体に働く遠心力を表しています。

 図3b 遠心力


 次の3つの図を見てください。図3cはすべての「ポジティブ」な力を表しています。

 図3c すべてのポジティブな力


 図3dはすべての「ネガティブ」な力を表しています。

 図3d すべてのネガティブな力


 図3eはダイナミックバランスに関係するすべての力と要素を表しています。

 図3e すべての力と要素


 この物体は以下の式が成り立つ時にダイナミックな釣り合いが取れています。

  (4a) F2L2 + W1R1 = F1L1 + W2R2

 しかしこれは成り立ちません。なぜでしょう?
 F = MRΩ2を思い出してください。そして M を W で置き換えると、以下の式が得られます。

  (4c) (W2R2Ω2)L2 + W1R1 = (W1R1Ω2)L1 +W2R2

 スタティックバランスが取れていれば、W1R1 = W2R2です。
 つまり式4cは次のようになります。

  (4f) (W2R2Ω2)L2 = (W1R1Ω2)L1

 L1 と L2 を除き、式の片側の項目は反対側と等しいことに注意してください。
 L2はL1より小さいので、(W2R2Ω2)L2 は (W1R1Ω2)L1 より小さくなければならず、したがって式4fは成立しません。
 これは、2つの質量の物体が異なる水平面にある場合、スタティックバランスが取れているとダイナミックな釣り合いは取れないということを意味します。
 しかしありがたいことに、Steadicamのように3つ以上の質量の物体が異なる水平面にある場合、ダイナミックなバランスをとることができます。

 3つの質量

 それでは単純な3つの質量を持つ物体について調べてみましょう。これは古き良きModel III Steadicamにカメラを装着したものに似ています。
 ここでは質量を名前(カメラc、モニタm、バッテリb)で呼ぶことにします。そしてSteadicamに影響するスタティック/ダイナミックな力を見ていきます。

 <図4a> 3つの質量を持つ物体


 図4aは単純なステディカムとそれに影響するさまざまな力と要素を示しています。
 ここではカメラの重心がセントラルポストの右にある状態で描かれていますが、私たちはまだ、カメラが実際にどこに置かれるのかを知りません。
 2つの質量を持つ物体の場合と同じように、スタティックバランスを取るためには、スタティックな力がお互いに打ち消されなければなりません。つまり加算して0になるということです。どの力が+でどの力が-かを覚えておいてください。

  (5) - WmRm + WbRb + WcRc = 0

 2つの質量を持つ物体の時と同様に、ダイナミックな釣り合いが取れている場合、すべての力は加算して0にならなければなりません。

  (6a) FmLm - WmRm
     - FbLb + WbRb
     - FcLc + WcRc
     = 0


 F を WRΩ2 で置き換えます。

  (6b) (WmRmΩ2)Lm - WmRm
    - (WbRbΩ2)Lb + WbRb
    - (WcRcΩ2)Lc + WcRc
    = 0


 なんとまぁたくさんの変数です。
 しかしリアクションポイントを注意深く選べば、この式を解くことができます。
 最初のステップは、図4aのように、リアクションポイントをカメラの重心の水平面上に置くことです。
 これで Lc = 0 です。したがって (WcRcΩ2)Lc = 0 です。そして物体のスタティックバランスが取れていれば、 - WmRm + WbRb+ WcRc = 0です。
 ここで 0 になる要素を式6bから取り除くと、式7aが得られます。

  (7a) (WmRmΩ2)Lm - (WbRbΩ2)Lb = 0

 あるいは次のように書けます。

  (7b) (WmRmΩ2)Lm = (WbRbΩ2)Lb

 Ω2は両辺に現れるので、これも取り除き、以下の式が得られます。

  (7c) (WmRm)Lm = (WbRb)Lb

 式7a7b7cには、カメラの重量や半径に依存する要素がないことに注意してください。
 これは、モニタとバッテリの適切な位置は、(式7cにより)カメラの重量の影響を受けず、変化しないということを意味します。これらの位置は、カメラの重心の垂直位置に関連する Lm と Lb にのみ依存します。
 まず式7cを使って、バッテリを置く半径(Rb)を求め、そして式5を解いてカメラ半径(Rc)を得ます。

注意:
 式7cを使って任意の変数について解けますが、通常は式7cを使ってRbを解きます。これには理由があります。

 前に「オペレータはまず撮影のために、可能かつ最前な範囲で主要なコンポーネントを位置決めします。そしてオペレータは、スレッドのスタティック、そしてダイナミックなバランスの調整を行います」と書きました。
 それでは例で試してみましょう。まず、カメラ、バッテリ、モニタの重量を計り、そしてそれぞれの重心位置を求めます。
 次にモニタを見ることと、慣性を考慮して、モニタの半径と位置(Lm)を選択します。
 そしてバッテリーの位置(Lb)を決めます。これは、スレッドを一定の長さにしなければならないからです(例えばレンズを高い位置にするために、スレッドを長くすることになります)。
 最後にステディカムのダイナミックバランスを取るために、バッテリ半径とカメラ半径を求めなければなりません。最初に式7cを解いて Rb を求めます。
 つぎに式5に Rb の値を入れれば、計算して Rc の値を求められます。
 バッテリとカメラをこれらの値に従ってセットすれば、Steadicamは完全にダイナミックバランスが取れています。
 リアクションポイントは、ダイナミックバランスを損ねることなく、ポストの軸上の任意の位置に移動できるということを思い出してください。
 これを示すために、適当な値を入れてみましょう。これには、変えられない値と、選択して決定できる値があります。
 一定の値は以下の通りです。

  Wc = 25ポンド
  Wm = 6ポンド
  Wb = 5ポンド

 一定の範囲(もちろん、ステディカム次第です)から選べる値を以下のようにします。

  Lm = 20インチ
  Lb = 30インチ
  Rm = 10インチ

 図4bを見てください。

 図4b


 まず式7cを使ってバッテリ半径(Rb)を求めます。

  (7c) (WbRb)Lb = (WmRm)Lm

  (7d) Rb =(WmRm)Lm / (WbLb)

     Rb = (6×10)×20 / (5×30)
     Rb = 8インチ

 ここで式5を使ってカメラ半径(Rc)を求めます。

  (5a) - WmRm + WcRc + WbRb = 0

  (5b) WcRc = WmRm - WbRb

  (5c) Rc = (WmRm - WbRb) / Wc

     Rc = ((6×10) - (5×8)) / 25
     Rc = 0.8インチ

 Rc を0.8インチにセットし、Rb を8インチにセットした場合、Steadicamはスタティックバランスもダイナミックな釣り合いも取れます。つまりダイナミックバランスが取れていることになります。
 式7c式5を解いたところで、リアクションポイントの移動がダイナミックバランスに影響しないことを示しましょう。
 例としてリアクションポイントをポスト上で6インチ下げます。つまりジンバルが置かれる位置です。図4cを見てください。

 図4c


 ダイナミックな釣り合いについての式6bの記述から始めましょう。

  (6b) (WmRmΩ2)Lm - WmRm
    - (WbRbΩ2)Lb + WbRb
    - (WcRcΩ2)Lc + WcRc
    = 0

 繰り返しになりますが、スタティックバランスが取れているなら、スタティックの項は0になります。残ったそれぞれの項にΩ2が現れるので、Ω2も除去でき、式8が残ります。

  (8) (WmRm)Lm - (WcRc)Lc - (WbRb)Lb = 0

 リアクションポイントを6インチ下げることで、次のようになります。

 Lm = 14
 Lc = - 6
 Lb = 24

 式8をこれらの値で置き換えると次のようになります。

 (6×10)×14 - (25×0.8)×(-6) - (5×8)×24 = 0

 つまり

 840 + 120 - 960 = 0

 これは、ジンバルをセントラルポストのどこに置いたかに関わりなく、Steadicamは完璧なダイナミックバランスを維持するということを示しています。

 5つの質量

 ここまでで、ダイナミックバランスを理解するために必要な、基本的な物理学と数学をすべて解説しました。
 しかしより良い数学モデルを望むなら、方程式にすべての主要な質量を取り込むべきです。
 図4cのSteadicamは、3つの質量しか持っていない物体です。電子回路や接続ボックス、Steadicamの構造物、スレッドに追加する各種アクセサリなどは考慮されていません。
 これらの質量はそれぞれスタティックな影響力があり、そしてSteadicamを旋回させた時、それぞれの質量は遠心力を生みます。図5aでは、この構造物にさらに2つの質量が追加されたときに何が起こるかを示しています。

 図5a 質量が5つある物体

 私たちの用語を使えば、ポストの前方の質量(モニタなど)はポジティブな遠心力とネガティブなスタティックな力を生みます。後ろ側に追加された質量(バッテリなど)は、ネガティブな遠心力とポジティブなスタティックな力を生みます。
 図5aに示したように、フォーカスモーター受信器はポジティブな Ff とネガティブな WfRf を持ちます。電子機器のユニットはネガティブな Fe とポジティブな WeRe という力を持ちます。
 それぞれの力を、2つのバランスの式に追加しなければなりません。
 スタティックバランスの式5を再構成し、フォーカス受信機と電子機器を考慮すると、以下の式が得られます。

  (9) - WmRm + WbRb + WcRc -WfRf + WeRe = 0

 そしてダイナミックな釣り合いの式6aは次のようになります。

  (10) FmLm - WmRm
    - FbLb + WbRb
    - FcLc + WcRc
    + FfLf - WfRf
    - FeLe + WeRe
    = 0

 これらの方程式を前と同じやり方で、つまり式10から初めて、スレッドがスタティックバランスが取れていると想定して解くことになります。次にスタティックな要素を除去し、F をMRΩ2 で、M を W で置換します。
 再びバッテリの適切な半径の式を解き、そしてその値を式9で使ってカメラ半径を求めます。
 Steadicamを十分にモデル化したい場合、Steadicamの接続ボックス、主要な構造コンポーネント、脱着するすべてのアクセサリを考慮すべきです。例えばUltraのコンピュータプログラムは5つの主要なコンポーネント、任意のカメラ、3つのアクセサリを考慮しています。
 これらの方程式をすばやく解くのは、コンピュータプログラムがない限り、悪夢といえるでしょう。

 現実上の制限

 私たちの数学モデルはかなり単純で、風の影響や、ある物体が不均一な質量分布である場合など、多くの事柄を考慮していません。例えばモニタのすべての内部部品は同じ密度ではないので、モニタの挙動は、重心位置にある小さくて高密度な質量とは異なります。
 記憶しておくべき重要なことは、この式は現実のモデルに過ぎないということです。
 ではなぜすべてを数学で説明してきたのでしょうか?
 それは、数学はダイナミックバランスに影響する主要な力を、明確に記述できるからです。
 このモデルは15年以上に渡って、とても有用なツールであることが証明されてきました。その単純さにも関わらず、このモデルはさまざまな面において、とてもうまく機能しています。
 例えば数学(そして方程式を解くためのPalm Pilotコンピュータ)を使い、だれでもバッテリを理想位置から0.25インチ以内に置くことができます。クイックスピンテストにより、システムを必要な精度に調整することができます。
 しかしこれは、数学と理論が重要であることの理由の1つに過ぎません。

■なぜ数学が重要なのか?

 長さや重さを測ったり、方程式を解いたりしないとしても、数学を理解することにより、仕事でも日常生活でも、さまざまな面でとても楽になります。
 基本的な理論を理解すれば、スレッドのコンポーネントをすばやく簡単に位置決めし、ダイナミックバランスを完全に近い状態にすることができます。
 またこの知識を利用すれば、主要なコンポーネントの移動、アクセサリの追加、レンズの交換、モニタのチルトなどを行った場合に、どのような変更を行う必要があるかを、かなり正確に予測することもできます。
 この理論を活用することで、コンポーネントを移動した後、ダイナミックバランスを回復するためには、バッテリを少し前後に動かしてから、カメラでスタティックバランスを取るだけでいいということを理解できます。
 この理論を使えば、スレッドにコンポーネントを付加する際に、スレッドでダイナミックバランスが取れない、あるいは取るのが難しくなるという状況を避けるやり方がわかります。
 数学を使うことで、あるカメラを配置する位置が特定の狭い範囲になる理由を理解することができます。
 数学を使うことで、見当はずれの、あるいは時間とエネルギーを無駄にする試行錯誤を避けることができます。
 主要なコンポーネントの構成をいろいろ選択できるスレッドの場合、長い、短い、中間、モニタ位置の高低、モニタの延長、VTRの取り付けの有無など、さまざまなモードのためのセットアップチャートを、数学を使って作ることができます。このチャートを使うことで、スレッドのダイナミックバランスを素早く最適に近い状態にすることができます。
 主要コンポーネントの構成の選択肢が少ないスレッドなら、ダイナミックバランスを取れる形でアクセサリを追加する方法を、数学を使って見つけることができます。
 何らかのカスタマイズされたパーツの集合体がある場合、このスレッドがすべての構成においてダイナミックバランスが取れるかどうか、あるいはお店で新しいパーツを求めなければならないかを調べることができます。
 ローモードでのダイナミックバランスが、ハイモードのダイナミックバランスと同じように簡単に実現できる理由は、数学を使って理解できます。
 これらは始まりにすぎません。

■各種のSteadicamで、単純な経験則でダイナミックバランスを取る方法

 基台にカメラを装着し、カメラにレンズ、マガジン、フィルム、モーターなどをすべて取り付けます。そして前後方向の重心位置に印を付けます。
 すべてのコンポーネントをスレッド上で位置決めします。この時すべてのコンポーネントが前後方向の1つの垂直面上に揃うようにします。つまりスレッドの横にコンポーネントを付加しないということです。
 必要に応じて、スレッドを希望する長さにします。そして撮影のための最善の場所になるように、モニタの高低、前後を位置決めします。
 カメラをステージに装着し、カメラの重心がセントラルポストの中心線より0.75インチ後ろに来るように、カメラをスライドさせます。
 スタンドのバランス用スタッド上にジンバルを置き、比較的長いドロップタイム、具体的には3秒から4秒になるように、上下方向のバランスを調整します。
 カメラを移動して、横方向のバランスを正確に調整します。
 バッテリを使って。可能な限り厳密に前後方向のバランスを調整します。これは非常に重要です。
 この段階で、カメラを使って前後方向のバランスを微調整します。
 横方向、前後方向の両方について、リグのスタティックバランスが良好になるようにしてください。
 数回旋回(スピン)させます。極端に速くする必要はなく、20 rpmないし40 rpmから始めます。ダイナミックバランスが取れてきたら、希望する速さで回します。
 ダイナミックバランスが許容できる範囲に収まらない場合は、バッテリを前か後ろに0.25インチ移動します。そしてカメラを使ってスタティックバランスを取ってから再度試します。良くなりましたか? 悪くなりましたか? リグがポストの軸で安定してパンするようになりまで、この調整を繰り返します。
 これで終わりです。

役に立つ情報:
 カメラの半径を記録しておくと、次回のこの手順をすばやく行うことができます。

 このバランス取り作業を一通り行うと、2分程度かかります。カメラを過度に高速に旋回させないこと、そしてあまり細かいことを気にしないこと。
 カメラのレンズの交換、フォーカスモーターの追加などを行った場合、スレッドのダイナミックバランスは狂いますが、通常はごくわずかです。カメラを前後に動かしてスタティックバランスを回復させれば、ダイナミックバランスも良好な状態に維持できます。なぜでしょう?
 バッテリーの配置は、(式7dに示したように)このコンポーネントからカメラの重心までの垂直距離だけに依存します。カメラの重量や半径は関係ありません。

  (7d) Rb = (WmRm)Lm / (WbLb)

 レンズの変更、フォーカスモーターやガラスフィルターなどの追加は、通常はカメラの垂直方向の重心位置を大きく変えることはありません。それゆえこれらの変更は、バッテリの適切な位置についても、ほとんど影響しないのです。
 スタンドの上でスタティックバランスを調整することで、「別のカメラ」をどこに配置すればよいかを簡単に決定することができます。カメラの半径を決定するために使ってきた式5cは、スタティックバランスの式であることに注意してください。

  (5c) Rc = (WmRm - WbRb) / Wc

■非数学的な概念モデル

 ここで、ダイナミックバランスを理解するために、単純な非数学的モデルを見て見ましょう。
 図6aはModel IかSKのように見えます。カメラの重心はポストの中心上にあります。モニタとバッテリは同じ水平面にあり、そしてそれらの共通の重心(赤いドット)はポストの下にあります。このユニットはダイナミックバランスが取れています。

 図6a Model IやSKの構成


 図6bでは、モニタ半径は同じままですが、モニタが少し上に上がっています。

 図6b モニタを上に上げた場合


 図6bはダイナミックバランスについては、Model IIIに似ています。バッテリの重心はポストに近く、そしてカメラの重心が後ろに移動しています。
 なぜでしょう? 3番めの図を見てください。

 図6c モニタを最上部まで上げた場合


 図6cでは、モニタが一番上まで上げられ、カメラの前に来ています。これによりモニタとカメラの共通重心(赤いドット)はポストの上に、そしてバッテリの重心はポストの下にあります。そしてこのSteadicamもダイナミックバランスが取れています。
 もちろん図6cは非現実的な配置ですが、重要な点があります。モニタが上に上がると、カメラの重心は後ろに移動し、そしてバッテリの重心はポストに向かって移動しなければならないのです。

基本的な規則:
 バッテリの位置から、モニタを全長の25パーセントないし30パーセント上に上げた場合、カメラの重心は、センターポストの中心線から0.75インチ程度後ろに移動します。

 スレッドを長くしたり短くしたりする場合はどうするか?

 ダイナミックバランスが取れているスレッドがあるとしましょう。バッテリとモニタをカメラから離してスレッドを延長した場合、新しい状況が生まれます。モニタをどれだけ(パーセンテージ)上げるかという観点で考えておくと有用でしょう。
 図6dに示すように、モニタを上げる量は、伸ばす前のバッテリからカメラまでの距離に対し、わずかな割合です。したがってバッテリはさらに後ろに、そしてカメラは前方に移動します。

 図6d スレッドを長くした場合


 リグを縮める場合(あるいは単にモニタを上げる場合)、モニタを上げる量は、バッテリからカメラまでの距離に対し、かなりの割合になります。そのため図6eに示すように、バッテリを前に、そしてカメラをさらに後ろに移動することになります。

 図6e スレッドを縮めた場合

 アクセサリを追加した場合はどうするか?

 ここで説明したリグのダイナミックバランスを取る単純な方法、前に説明した非数学的な概念モデルと数学モデルは、どれもリグのダイナミックバランスを取る最初のステップとして、バッテリを適切に位置決めするようにしています。
 そのためアクセサリを追加する時は、アクセサリの配置に対して、ダイナミックバランスを取るためにバッテリがどのように「働かなければ」ならないかを考えるのがよいでしょう。
 つまりアクセサリがポストの前方に追加されたなら、この質量と力を打ち消すために、バッテリは「よりしっかりと」働かなければならず、バッテリをさらに後ろに移動することになります。図6fを見てください。またアクセサリが下に下がるほど、バッテリはよりしっかり働かなければなりません。

 図6f ポスト前方にアクセサリを追加


 アクセサリが図6gのようにポストの後ろに追加される場合、これはバッテリの仕事を「助ける」ことになります。
 したがってカメラでスタティックバランスを取り、ダイナミックバランスのためにスピンテストを行う前に、バッテリを前に移動することになります。

 図6g ポスト後方にアクセサリを追加

■ダイナミックバランスプログラムの利用

 ダイナミックバランス用のコンピュータプログラムはとてもよい教材です。これはスレッドに特定の変更が行われた時に、バッテリとカメラの半径がどうなるかを正確に示してくれます。これはどのような変更が大きく影響するのか、あるいは影響が小さいのかを示します。
 またよくできたダイナミックバランスプログラムは、リグでどれだけ多くの構成が可能かに関わらず、オペレータが素早くリグのダイナミックバランスを取るのを支援できます。出来のよいプログラムは、Steadicamのすべての主要な質量、任意のカメラ、そして多くのアクセサリを考慮しています。
 Steadicamのセットの構成を変える際に、(たいていの場合は)オペレータは3つの新しい測定値だけ指定すれば、コンピュータはバッテリとカメラの正確な位置を決定します。通常はスピンによるバランス調整は必要ありません。ローモードに反転したり、スレッドの長さを伸ばす場合には、本当に便利に使えます。

訳注:
 現在、筆者のサイトで、計算用のExcelシートが公開されています。

ダイナミックバランスを維持する上で、やってはいけないこと

 リグの横にコンポーネントを追加してはならず、そして横方向のバランス調整にカメラ基台以外のものを使ってはいけません。なぜでしょう?
 図7aを別の向きで見てみます(図1cと同じです)。

 図7a


 W2とW4は、スレッドの両側に装着されたアクセサリを表しています。ここまで説明してきたすべての力が前後方向に影響するのに対して、これらが生み出す力は、ポストを横方向に傾けるように働きます。ダイナミックバランスのために「前後」の力が等しくなければならないのと同じように、W2とW4は、等しくなければならないまったく新しい力の組をもたらします。
 バッテリとカメラの位置を数学的に決定することはできますが(もちろんコンピュータを使ってです)、どうすればよいかを経験的に判断するのは困難です。問題を解決するために、バッテリ(あるいはカメラ、もしかするとその両方)を横方向に動かすのか、あるいは前後なのか、その組み合わなのか? それを知る方法はありません。
 ダイナミックバランスのためにさらに悪いのは、バッテリを左右に動かしてバランスを取ることです。リグのほかのコンポーネントが前後方法に適切に調整されているとして、オペレータがバッテリを使って左右のバランスを取った場合、これはスタティックバランスのためにカメラの重心を反対側に移すことを意味します。図7bを見てください。

 図7b バッテリを使った左右方向のバランス調整


 これは、図3aから図3eで示したのと同じ状況になります。このような質量の配置は、スタティックバランスが取れている場合に、ダイナミックな釣り合いと取ることができないということをすでに示しました。つまり、ダイナミックバランスが取れないということです。
 SteadicamのModel I、II、IIIは、バッテリを両側に「振り分け」ました。幸運だったのは、カメラを基台に装着できたので、カメラの重心を軸に近い位置にできました。しかしダイナミックバランスの観点からは、これはよい設計とはいえません。

ダイナミックバランスのためのスタティックテスト?

 これで終わりにはできません。遠心力は、リグが旋回しない限り発生しません。どれだけ精密に行おうと、すべてのスタティックなテストはスタティックな力しか考慮できません。旋回させなければ遠心力は存在しません。別の言い方をしましょう。例えばスレッドを水平にした場合、このテスト(図8)は図2eのスタティックテストとまったく同じになります。

 図8 水平に

 図2c


 スタティックテストが「うまく使えた」としても、それはモニタとバッテリが同じ水平面にあるという、リグの構成のユニークさが理由です。
 補足すると、スレッドにほかのコンポーネントがないか、あるいは同じ水平面上に2つのコンポーネントがあり、注意深くバランス調整されていなければなりません。しかし前述のシンプルな手順は、いかなる構成のSteadicamでも対応します。

■上部の調整

 オペレータは、撮影のために常にSteadicamのバランスを活用すべきです。
 カメラをスレッドに対して垂直にせず、意図的に角度を付けることがしばしばあります。撮影時にゆっくりしたパンしか行わない場合、遠心力は小さいので、ダイナミックバランスが取れていることよりも、スレッドをある角度で支えることのほうが重要かもしれません。
 それではこんなテストをしてみましょう。スタンド上で完璧にリグのダイナミックバランスを取ります。そしてカメラを前方に移動してスレッド(およびカメラ)を何度かチルトさせ、そしてある程度の速さでスピンさせます。何が起こるでしょう? リグの挙動はすぐにおかしくなります。
 ダイナミックバランスを維持したまま、カメラアングルを上下させたい場合は、インテグラルチルトヘッドか、ウェッジプレートを使う必要があります。
インテグラルチルトヘッドについての詳しい情報は、Ultra Manualを参照してください。

■モニタのチルト

 次のテストを試してみましょう。スタンド上で完璧にリグのダイナミックバランスをとり、そしてモニタをチルトさせ、再びスピンさせます。
 モニタがその重心点でチルトしたのでない限り、式中の Lm も Rm も変わってしまうので、スレッドはもはやダイナミックバランスが取れていません。

 図9a モニタのチルト


 スレッドをとても長く、あるいは短くしてこのテストを試してみましょう。今度は何が起こるでしょう?

 図9b チルト位置が重心に近い場合


 このモニタは重心の近くでチルトするので、チルト操作はスレッドのダイナミックバランスにわずかな影響しか与えません。

■結び

 実際の操作のために、ダイナミックバランスは重要です。
 ダイナミックバランスの概念を確実に理解することは、オペレータが各種のSteadicamのダイナミックバランスを、計算などをすることなく、素早く効率的に調整する助けになります。
 また何らかの構成変更を行った際に、ダイナミックバランスを再調整するのも簡単になります。
 ダイナミックバランスとは何か、ダイナミックバランスとは関係ないもの、そして実用上の制限など、ダイナミックバランスを理解することは、さまざまな状況において、オペレータがダイナミックバランスの重要性を判断する助けになります。
 数学を理解して利用することは、概念の理解に役立つだけでなく、小型コンピュータの助けを借りることで、極めて便利なツールとなります。
 また機器を改造したり、すべての構成でリグのダイナミックバランスを取れるようにしたいと考えている人にとって、数学はとても重要です。
 筆者の望みは、この文書が、この問題の重要性を理解しているすべてのオペレータの役に立つことです。

 Jerry Holway 2003/4/1

■いくつか補足

 モニタが横方向に離れている時、あるいはカメラが前を向いていない時に、スレッドのダイナミックバランスを素早く簡単に取る方法(数学は不要)を、ここで示しておきます。
 このトリックの概念は、すべて重心(図中の黒点)の観点で考えることです。私たちのモデルでは、それぞれのパーツの向きも形も気にしていません。物体の質量と重心の位置だけに関心を持っていました。
 必要なのは、すべての重心を1つの垂直面上に配置することであり、そしてこれを実践することで、Steadicamは簡単にダイナミックバランスを取ることができます。
 すなわち、バッテリをモニタのまっすぐ後方に置くことを守れば、カメラを希望する任意の方向に向けられるということです。カメラの重心をポストの0.75インチ後方に置くこと(ポストの「後方」とは、常にバッテリとモニタを収める垂直面上においての位置関係です)から始めます。そして前に示した方法でバランスが取れます。
 モニタとカメラが同じ方向を向いているか、お互いに180度の向きなら、操作は簡単です。

■楽しいこと

 完全にスレッドのダイナミックバランスを取り、そしてスレッドが上下方向に自然にバランスする位置にジンバルを配置します。これでスレッドは任意の角度を維持することができ、そしてセントラルポストの軸で安定したスピンを続けることができます。
 スレッドが非常に長いと、これはさらに楽しいものになります。リグをパンさせ、そして全体を大きな弧を描くように回転させます。
 同時に移動することもできます。するとSteadicamはとても洗練された不思議な物体となります。

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