Marantz 7C Stereo Consoleのこと


 真空管アンプを作ったので。。。

 先日、春日無線の2A3シングルメインアンプのキットKA-27SEを作りました。
 これには入力レベルつまみが付いているので、CDプレイヤーなどのライン出力を直接つないで使うことができます。でも、レコードプレイヤーからの入力を受けるには、フォノイコライザーが必要です。トランジスタアンプと組み合わせるのもなんなので真空管式にしようと思い、いろいろ調べてたらMarantz 7に行き当たりました。このイコライザー部を抜き出して作ろうかな。

 Marantz 7の構成を調べたのでメモしとく

 Marantz 7C Stereo Console、世間では一般にMarantz #7とかマランツ7と呼ばれている真空管式プリアンプは、一部のオーディオマニアにいたく気に入られているようです。個人的に、やれ真空管はテレフンケンの山菱の代紋だの、コンデンサーやボリュームのメーカーがどうのとか、考古学や神話や宗教の話題はどうでもいい(そんなの聞き分けるような耳もってないし)のですが、作るからにはいろいろ調べなければなりません(今さら真空管という突っ込みはなしということで)。
 とりあえず、自分がフォノイコを作る上で必要な覚書などを、ここにメモしておきます。

 Marantz 7C Stereo Console service manualのいい加減な和訳

 ネットでちょっと検索すると、このサービスマニュアルが見つかります(これとか)。割と高解像度のPDFファイルなので、回路図中の定数とか部品番号までちゃんと読み取れます。必要な情報は、このマニュアルにほとんど書かれてました。

   おしまい。

 というのも何なんで、せっかくなので日本語に直してみました。図版はPDFのスクリーンショットの低解像度のものです。

 ・Marantz 7C Stereo Console service manualの和訳


以下、私的メモ。


 全体の構成

 まぁ、プリアンプです。
 細かなことは、以下のセクション単位のとこでメモしときます。

 プリアンプ/イコライザー部

 12AX7×3/2構成です。1つの球の2要素を使った最初の2段で増幅、最後の1段はカソードフォロワーのバッファーアンプです。カソードフォロワーは、左右で1つの球を使ってます。
 サービスマニュアルでは、この部分をプリアンプと呼んでます。全体を呼ぶ場合はステレオコンソールといってます。
 このプリアンプは、イコライザー特性をいくつか選べるようになっています。マイクは周波数補正なし、フォノ用がOLD 78、RIAA、COL LPの3種類、さらにテープヘッド用です。入力セレクタでは、マイク、フォノ1、2、テープヘッド、さらにライン入力4系統が選べますが、プリアンプを通るのはマイク、フォノ、テープヘッドです。3種類のフォノイコライザーの切り替えは、入力セレクターではなく、中央部の3ポジションレバースイッチで行います。
 イコライザーは、カソードフォロワーから初段へのフィードバックで実現されます。このフィードバック部のCRが入力セレクタとイコライザのセレクタで切り替わります。世間では、ここからRIAAイコライザを選んだ場合の回路が、マランツ7のフォノイコライザーとして広まっているようです。以下は自分で起こした回路図です。


 GNDラインの下に飛び出した部分がイコライザー用のCR回路で、この部分の構成がスイッチで切り替わりますが、今さらRIAA以外のイコライザー、テープヘッド、マイクアンプなど必要ないので、事実上この回路しか作られないのでしょうね。
 初段のグリッド抵抗が1MΩで、さらに入力に47kΩがあります。1MΩはいらないんじゃね?ということになりますが、これは入力切替によるものです。この47kΩはフォノ入力を選択した時のみ挿入される抵抗で、マイクやテープヘッド入力の時はこれが入らないので、1MΩ受けとなります。
 また、入力セレクターでライン入力を選択した時は、このプリアンプの入力はGNDに落とされます。世間のマランツ7風プリアンプでは、この処理を行っていないものもあるんじゃないかな。
 カソードフォロワーの出力は、プリアンプの以後の段、具体的にはライン入力とのセレクター、テープモニター切り替え、バランス、ボリュームを通ってトーンアンプに行くのですが、それとは別にTape out(Rec out)に行きます。接続状況によって発振しやすいらしく、出力に直列にはいってる1kΩは発振防止用らしいです。

 バランス/ボリューム/モード コントロール

 今のステレオだとバランスの可変抵抗はMNカーブですが、マランツ7のバランスはどうもAと逆A(C?)を2連にしたものみたいです。つまり、一方のチャンネルは普通のボリューム、もう一方は逆回しボリュームということです。普通のバランスだと中央で最高ボリュームになりますが、マランツ7の場合、真ん中で-3dBの減衰で、回しきったところで減衰無になるようです。
 モードとボリュームは特にどうってことはないみたいです。中にはボリュームのメーカーにこだわる人もいるようですが。。

 トーンアンプ

 ボリュームからの信号はトーンアンプに入ります。これは12AX7を2/2使った増幅回路に、トーンコントロールスイッチによるRC回路のフィードバックがかかっています。ボリュームじゃなくて11ポジション、左右独立でバスとトレブルのCR切り替えスイッチなんて、嫌がらせとしか思えないんですけど。。測定器じゃあるまいし。
 回路図を追っていて気付いたのは、この11ポジションのロータリースイッチ、トレブルはニュートラル±5ステップですが、バスは+6、-4ステップなんですね。回路図のスイッチの接点が対称に並んでなかったのはこのせいでした(特性図のカーブをよく見れば、ちゃんとそうなってるし)。トレブルもバスも、回路図上でスイッチが水平の時がニュートラルで、両方ともニュートラル位置だと、フィードバックは82kΩの抵抗1本だけになり、コンデンサははいりません。
 サービスマニュアルによると、無補正時にトーンアンプは22.5dB、プリアンプが42dBになっています。単にフォノイコライザーだけ作る場合は、トーンアンプを省略する場合が多いようですが、微妙なゲインですね。トーンアンプだけ組み込み、RC切り替えのフィードバックは端折るという作りのものも多いようです。

 フィルターと出力バッファー

 トーンアンプからの出力は、CRハイパスフィルターを通り、カソードフォロワーのバッファーアンプに送られます。このカソードフォロワーは、1つの球を左右のチャンネルで分けて使っています。この出力はLCローパスフィルターを通ってプリアウトに送られます。ローパスフィルターとカソードフォロワーの間には、出力レベル調整の可変抵抗があります。これはカットオフまでは絞れないものです。
 このフィルター部分とかレベル調整も、きっと端折るでしょう。カソードフォロワーは、出力バッファーとして入れとくべきでしょうね。

 ヒーター電源

 12AX7は双三極管なので2系統のヒーターがあり、これを並列にすれば6.3V、直列にすれば12.6Vで点火できます。マランツ7のヒーター電源は、セレン全波整流とCR平滑回路で18.9V電源を供給し、ヒーターを3つ直列に点火します。球6個でヒーター12個を、3個ずつ4系統という接続です。

 さぁ、あとは部品を揃えて作るだけだぁ。(ここからが長い)